イランーパキスタン国境越え【ザーへダーンークエッタ】
さて、年越し前にイランからパキスタンへの国境を越えてきました
レベル4の危険地帯として外務省がこの国境をオススメしていないため、ギリギリまで飛行機で飛ばすか迷いました
このルートを通った理由は3点あります
・イランとパキスタンを情報ではなく自分の目で判断したかった
・できる限り陸路で日本を目指したかった
・イランからパキスタンorインドへの航空券が高かった
この国境越えについては非難の声も多々あると思いますが、実際に通って見えたものを残しておこうと思います
念の為、もし同じように国境を越えようとしてこの記事にたどり着いた方がいる場合、完全に自己責任でお願いします
※外務省危険度マップでレベル4に指定されているエリアを5日間かけて移動することになります
「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」
その国・地域に滞在している方は滞在地から,安全な国・地域へ退避してください。この状況では,当然のことながら,どのような目的であれ新たな渡航は止めてください。
結論から言うと、危険は全くと言っていいほど感じませんでした(個人的な感想)
むしろ景色や人、街はこの旅の中でも飛び抜けて素晴らしかったです
アフガニスタンの状勢が早く安定することを祈ります
1日目
シーラーズからイラン側国境の街ザーへダーンまではバスで15時間
国境越えに関してはこちらのサイトを参考にさせて頂きました
「プチ社長日記」
どうやらザーへダーンに宿泊すると、宿から連絡がいき国の警備がつくらしいです
イラン側の危険は少なく感じたので夜行バスを使って警備無しで国境へ向かいます
シーラーズ→ザーへダーン(約650円)
朝7時にザーへダーンへ到着
タクシー運転手に国境までと頼むと
「あと3人集まったら出発するからチャイ飲んで待っててくれ」
待合所でチャイをもらって...ってあれ?おじちゃんもチャイ飲むの?
客集めなくていいんかい
日本人は珍しいようで、3人に囲まれて
俺の車はTOYOTAだ!
日本の写真を見せてくれ
と大人気
携帯を半年に一回全損するうっかりものなので写真が全部クラウド上なんですよねー
ごめんなさいと言いながら、LINEのトークに残っていた和食を披露
イラン人タコは食べないみたいですね
もちろん生魚も
あれ?おじちゃんそのチャイ2杯目?いつ集まるのこれ?
パキスタン側はLEVIES(レヴィーズ)という警備が必ずつくのでそれを考慮して朝早く来たんだけど、この調子じゃだめそう
ま、いっか
結局3時間後の10時にザーへダーンを出発し、国境に着いたのは11時
イラン側パキスタン側ともにすんなり
※パキスタンビザは第三国取得が不可能なので、日本で事前に取得する必要があります(東京・大阪・郵送)
100円という謎の安さなので行く予定がなくても旅前に取っておいて損は無いと思います
とりあえず期限内に入国ができて一安心
ここからはLEVIESという警備と一緒にパキスタン西部の都市クエッタへと向かいます
「今日は移動は出来ないから1晩ゲストハウスに泊まってくれ」
うん、知ってた知ってた
国境からの移動は、LEVIESの移動時間に合わせることになるので、当日の国境1泊を避けたい場合イラン側で朝6時には入国審査を済ませる必要があります(時差一時間半)
時間もかなりアバウトなようなので狙って行くのは現実的ではありません
ゲストハウスでは先客ドイツからの旅人Philip(フィリップ)がウルドゥー語(パキスタン公用語)を勉強中
まさかの旅の仲間
彼は今日中に出発するため朝早く来たそうですがダメだったようです
フィリップと宿泊所
もちろん宿は無料です
そして2時間ほど遅れてまさかまさかのもう1人旅の仲間Jesus(へスース)がスペインからホンダのバイクに乗ってやって来ました
上記のブログでも、この国境は経験者向けと書かれていましたが、僕が安全に抜けれたのは仲間がいたことも大きいです
食事もおいしく、宿もあるのに何が悲しいって
今日はクリスマス!!
まさか国境の詰所でクリスマスを迎えることになるとは想像も出来ませんでした
コーラ(ムスリムなのでお酒はありません)で乾杯。全く聖夜を感じることなく就寝
2日目
朝8時半にLEVIESと共に出発!
トラックの荷台に乗り込んでひたすら砂漠を走ります
途中こんなチェックポイントでパスポートや写真など手続きをしてただただ走る
一点の雲もとどめぬ空
見晴らしの良い道なのも安全に感じた理由の一つです
ちなみにチェックポイントは軍・警察・LEVIESと3種類あるので数え切れないほどパスポートを出したり、車を乗り換えたりします
次の車が来ない時はチャイで一服
同乗のLEVIESは自動小銃装備
中国製のAK-47
砂が細かくて綺麗です
遊んでても特に何も言われることは無く
昔から憧れのトラックの荷台
へスースはというと
こんな感じで後ろから追いかけてきてます
車と運転手が区間ごと変わるので、飛ばし屋の時は大変らしい
線路もあります
列車は今は走っていません
砂か雪かは違えどアジアのシベリア鉄道と言った所でしょうか
国境周辺からクエッタを含めこの地域はバロチスローン州と呼ばれています
バロチスローンはアフガンとイランにもまたがる地域名であり、生まれや経緯によってLEVIESの中にはペルシャ語、バロチスローン語、英語を喋る人もいます
ウルドゥー語が出来れば困ることはありませんがまぁ挨拶、YES、NOと簡単な疑問文はどの言語でも分かるようになります。5日もあるので
フィリップにチャドルを貰ったのでおじいちゃん達にならって巻いてみました
荷台は日差しと風が強く、砂塵も多いのであると便利です
一日をかけて隣町ダルバンディーンに到着
宿屋は1000ルピー(900円)と気持ち高めですが選択肢はないので3人部屋に泊まります
水周りはお世辞にも綺麗とは言えません
LEVIESが隣の部屋に2名宿泊します
温水とWiFiはないと言われましたが、時期によるものかもしれません
本を読んだり、日記を書いたり、瞑想してみたり笑
この時はそれっぽいことしながらたぶんハンガリーのエゲルワインを思い出してます(煩悩の塊)
三日目
LEVIESは遅れること一時間半、9時半に宿にやってきて再び僕達を荒野に放ちます
景色は相変わらずですが飽きはしません
車や道路沿いの村から住人が出てきて手を振ったりしてくれます
警備の1人に聞いたところ、彼の経験では半年ぶりの日本人だそうです
10年前に危険地域に指定されて以来日本からの観光客は両手で数えられるくらいしか来ていないらしいです
あ、ちなみに彼らの両手は30まで数えられますよ
関節の数+1ですね
小指側から数えます(この写真では4)
途中のチェックポイント兼昼食休憩にて
パフォーマンスが盛況
渾身の1枚
Leicaのデュアルレンズ搭載スマホを出発前に手に入れたので、使いこなそうと必死です
未だなくしてないのは自分でも不思議ですが
Byフィリップ
4色だけの世界
入れ替わりでやってくるLEVIESは個性豊か
だるそうに奥に座ってるウルドゥー語しか話せない隊員が、マジックに興味津々だったりいい人ばかり
最後の乗り換えはレンジローバー
ここまで20台近いTOYOTAに乗り、それ以上パスポートを提示しました
クエッタには日の入りと共に到着することが出来ました
ノリノリなおじいちゃん
後ろのへスースは本気で怖がってます
市内は21のブロックに別れており、それぞれ担当するセキュリティが異なるため交差点でバイクに乗り換えます
お金がないから泊まらせてくれと警察署に連れて行ってもらいます
へスースはベッドで寝たいのと、バイクの置き場ということでブルームスターホテルへ
しかし
「冬場は空いている部屋がないので泊まれない
ブルームスターに泊まってくれ」
との回答
警察署に泊まったバックパッカーも今までにはいるそうなので期待したんですが残念
結論
予想通り!聞いていた通り!二度と泊まりたくない宿です
次に同じルートを通る方がいたら、是非ルーズホテルorセレナホテルに泊まってください
宿は他にもありますが、外国人が泊まれるホテルは警察指定のこの3つだけです
値段は
セレナホテル=15000円
ルーズホテル=?(他2軒の中間)
ブルームスター=3000円
とかなり高くなってしまいますが、聞いた話では他二つの宿は値段相応の星ホテルです(お酒もあるとか)
その理由を感情に任せて書いていこうと思います
へスースに遅れて到着した僕とフィリップ
先にチェックインしたへスースと同じ部屋をとるためにへスースを呼んで欲しいと頼みます
「彼は既にチェックインしているから会えない
君らがお金を払ってチェックインしたら会いに行っていいよ」
いやいや、とりあえず相談したいから呼んでくれる?
「彼はDon't disturbと言っているから私たちには起こせない」
お金払わないと友達に会えないってどういうこと
じゃあこっちで起こすからWiFiのパスワード教えて
「宿泊客にしかパスワードは教えられない」
いらいらいらいらいらいらいらいらいら
じゃあ彼と同じ部屋で僕らは床で寝るから
「部屋は関係ない。床で寝ても1人2500ルピーだ」
そんな馬鹿な話あるか!と思いながらも冷静にWiFiや朝食、シャワーについて尋ねていると
「君らは一体何がしたいんだ!泊まりたくないなら泊まらなくていい!」
とまさかの逆ギレ
こんな宿泊まらん!世界中いろんな安宿に泊まってきたけど、レセプションが客に怒鳴るホテルは初めてだ!
別のホテルにいく!!
「別にいいよ。セキュリティなしで外には出られないけどね
ちなみに僕らが電話しないとセキュリティは来ない」
ぷっちーん!
フィリップは呆れて笑ってます
そもそも3000ルピーの宿代はパキスタンの物価から考えると恐ろしく高い
加えて、部屋はWifi使えず、ヒーターは8時にはガスが閉まって使えない、水、石鹸、タオル等受付で渡されるものを使うと追加請求
絶対明日出ていってやる!
仕方なく2人部屋に泊まります
四日目
このクエッタの街から他の都市に移動するためには、警察発行のNOCレターというものを取得する必要があります
ということで、8時にやってくるセキュリティを待ちます
待ちます
待ちます
待ちます
11時...
ラホールまでの電車はもう絶望的ですが、バスは毎時出ているのでとにかく早くNOCレターを受け取りたい!
強硬手段にでます
「もう勝手にいくから!遅いのはセキュリティの責任だしもし怒られたらこっちの責任にしていいよ。とりあえずパスポート返して」
「行かせられないしパスポートは返せない」
そんな権利は宿にあるはずもなく、そもそも宿にセキュリティが常駐してない時点で警備なんて無意味
パスポートを返却しないなら大使館に連絡を入れると詰め寄ると、焦ってセキュリティに電話をかけ、見事5分後にやってきました
いや、5分で来れるじゃん...
こういうところだよ。警察とのグルを疑われるのは
そして、荷物は宿に置いていかなければならないという謎のルール
料金が1泊ではなく24時間というネットカフェさながらの料金体系なので、なんとしても2泊分の料金をふんだくりたいのでしょう
警察署には案の定暇そうにチャイを飲んでるセキュリティが沢山
NOCのオフィスでは
「今日はもう11時で遅いから移動は明日になる」
8時に来るとか言ってたの誰だよ
もうそれでいいから1回その顔を殴らせて欲しい
そして待たされること2時間
内心怒りの炎で焼き焦がれていますが、警察権力に逆らえば先はないので御機嫌を取ります
お祈りの時間を挟むのでもう1時間待機
列車のチケットと両替のため街に出たいと伝え、トゥクトゥクに乗ります(運賃こちら負担)
中央:へスース
警備のリーダーらしき人
「※¶×☆≫ゞブルームスター∀♂♯」
いやいやいやいや!違うよ!ブルームスターじゃなくてバンク!バンク!
必死の抗議虚しくブルームスターに連れていかれます
何故毎回こうも上手くいかないかと言うと、命令系統が統合されていなく、各チームが伝言ゲームさながら無責任なんです
ブルームスターのパーキングで言い合っていると再びレセプション男性
「おい聞け!バンクは昼休憩だ!駅は24時間だしあとでもう一度セキュリティを呼ぶからそれでいいだろ!」
(注:駅は24時間ではありません)
「そういって今朝は3時間待ったけど?」
「それは俺のせいじゃない!」
もう3人揃って呆れ笑い
「笑うな!俺はジョークを言ってるわけじゃない!」
なんでレセプションに怒られてるんだろう僕ら...
迎えに来てくれた新しいセキュリティは、銀行のある別地区の担当で、これが素晴らしい人達でした
警察の仕事は逮捕だけじゃなくて、夜中のパトロールや案内、つまり人を助けることが仕事なんだ。と語るアリーはパキスタン人の鏡
彼曰くNOCやブルームスターのある中央地区担当は市内でも最悪で、宿と警察の癒着は誰でも知ってるそう
そのお詫びと、この10年で初めての観光客(この地区での)ということでバザールやレストランをかなり自由に案内してもらいました
昔はドイツや日本からの観光客も多かった地域で、どこに行っても歓迎されます
(左:フィリップ 右:アリー)
喜んで値引きしてくれるバザールの主人たち
宇宙人を見るかのように文字通り顔を覗き込んでくる子供たち
彼らにとって僕達はお金持ちの観光客ではなく、異国からやってきた旅人
コインで子供と遊んでいたら、ものの5分で人だかりが出来ました
ブルームスターで夜中休んでると
Knock Knock!
従業員が2人タバコを吸いながら入ってきました
「外寒いからちょっと暖まらせて」
自分の部屋か!!
もうなんだか慣れてしまって言葉が出ない
五日目
クエッタ最終日
NOCレターを握りしめてレセプションで待ちます
驚いたのは初めてセキュリティが時刻通りに来たこと
列車のチケットが前日遅すぎて売り切れだったので朝早くからキャンセル待ちです
キャンセルは毎日出るらしいので、この時間なら大丈夫だろう
と、そう簡単には行かず
またもや情報伝達不足から駅構内の派出所で待たされること1時間
昨日8時にチケット売り場に来るよう言われたから連れて行ってくれ!といっても
「なんで昨日チケットを買わなかったんだ?ちょっと待て、チケットを確認してやる
...
残念ながら満席だそうだ。キャンセルが出たら回してやる」
それは知ってるって!と、会話がちぐはぐ
このまま今日もブルームスターに泊まることになるんじゃないかと半べそをかきはじめたころ
プラットフォームを歩いていた警察が事情を聞いてこっそりチケット売り場へ連れて行ってくれました
状況を説明するとすぐに2席用意してくれた上、夜には席を融通して寝台まで用意してくれました
本当にパキスタンはほとんどがいい人なのに、大事なタイミングで権力を握っているおじちゃんが大体ポンコツ
とはいえ無事に列車に乗って自由の身となりました
これまでと変わることなく続く砂漠
列車は24時間をかけてラホールへ
途中停車駅にお店が出ていますが、もたついてると置いていかれます
汽笛もならないので毎回走り始めてからみんなで追いかけて飛び乗ります
チャロ!チャロ!(行け!行け!)
お隣の家族と車両中の子供たちが集まってきて、折り紙をしたりマジックをしたり簡易保育所
このブース脇の通路だけすぐに人が詰まるので鉄道警察が来るわけですが、警察まで参加しちゃうので交通整理は僕の仕事
スルタンくん
コンタクトボールが大好きで、ずっといじくってました
足に落として大泣きしても、演技を見せたら泣くのを忘れちゃう天使のような子です
史上最年少コンタクトパフォーマー
ラホールまでの道中NOCレターは1度も求められませんでした
「Stupid letter! Nobody wants to see!」
-Philip-
窓から吹き込む砂塵で乗客を砂まみれにしながら寝台列車は進みます